9月11日、初秋の朝。雲は低くたれこめて、どんよりしていた。
風はなく気温はぬるかった。
この朝、穂納内(ヲタルナイ)を流れる勝納川河口の河原に、川を挟んで往来に向けて2個づつ、合計4個の斬首された首が晒された。
橋の上から見て、右手の信香町側に「吉五郎」と「小太郎」、左手の勝納町に「権平」と「万作」の首が置かれた。首は、平台に間隔を空けて2個づつ置かれ、「逆さ釘」といって、板底から五寸釘を打ち抜き、三寸ほど飛び出た釘先に首を刺して固定してあった。
4個の中の、吉五郎と小太郎の首は、眼を閉じて静かな表情であったが、首の切り口付近は真っ白く膨らんで何かが蠢いていた。ウジ虫がたかっていた。そして、もう一つの万作の首は、顔が中空に向いて口を空け、何かを叫ぶように悲しそうであった。
4個目の権平の首は、黒ずんで引っ込んだ眼窩の真ん中に丸い両目がカッと見開き、観入る者を見据えて、それは恐ろしい形相であった。
この物語は、慶応4年(明治元年、1868)4月4日に蝦夷地の小樽で起こった御用金強奪の「史実」である。
時は幕末最後の年で、日本は内戦(戊辰戦争)の嵐が吹き荒れていた……。
●著者/千葉正樹
●書き下ろし単行本
●A5判/90ページ
●旧地図入り
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